ひとりSD

地方私大職員の備忘録

文科省の改善意見・是正意見

大学で四捨五入…「Fラン大学」が映し出す日本の未来 - DMMニュース

NHK報道を皮切りに各所で報道されていた上記のような記事について、気になったので調べてみました。

 

元を辿ると、文科省が例年実施している「設置計画履行状況等調査」の結果公表を受けての記事でした。上記の調査は大学・大学院の新設、学部の増設・改組などを行った後のアフターケアとして例年実施されているものです。調査対象校502校とありますので、全国の大学・高専の過半数が調査対象となっています。調査結果の本体はこちらです。 

 

調査結果を見ると、公立大学や有力私立大学(明治大学・法政大学など※)にも改善意見が出されています。また、改善意見には明治大学をはじめ「定員超過を是正しなさい」という内容も含まれていますので、DMMニュースの「Fラン大学」やJ-CASTの記事見出し「トンデモ大学253校」などはさすがに短絡的な言い方ではないでしょうか。PVを稼ぎたいのはわかりますが。 

 

とはいえ定員割れが状態化し、入試が機能しなくなっている大学が数多くあることは確かです。調査結果をざっと流し読みすると、知名度の低い大学のカタカナ学部が軒並み「定員充足率が0.7倍未満となっていることから、学生の確保に努めるとともに、入学定員の見直しについて検討すること」との改善意見を食らっている有様で、死屍累々といった状況に寒気を禁じ得ません。

 

文科省としても、昨年度の調査結果では「留意事項」と表現していたところを今年度から「改善意見・是正意見」に切り替え、大学への指導を強める姿勢を見せているのは、定員割れの多さに痺れを切らしているからかもしれません。

 

しかし、定員充足率70%未満の大学が「定員割れを改善せよ」と言われても、広告を増やしたり高校訪問を増やすだけで解決するとは思えません。そもそも、自分の大学の特色を出して学生集めを有利に運ぶためにカタカナ学部を新設するわけですが、そうした取り組みの失敗が明らかになった時点で、そこから先の志願者増は望み薄と言えます。

 

すなわち、文科省は暗に「入学定員を減らしなさい」と言っているのでしょうが、大学側からすると定員を減らした分だけ教職員を減らせる(解雇できる)わけではありません。定員充足率を100%に近づければ補助金収入は若干増えますが、学生数が増えるわけではないので学費収入は増えず、コストを減らせなければ収支の改善にはつながりません。さらに定員変更の事務手続も煩雑となれば、大学側としては後ろ向きになりがちです。撤退戦を戦うことは本当に難しいものです。

 

※ちなみに明治大学は「総合数理学部現象数理学科の入学定員超過を改善しなさい」との意見を出されています。同学科は定員160名に対して現員231名、定員充足率144%でした(参照元)。確かに意見を出されて仕方がないくらいに学生を取りすぎています。25年度は開設初年度で歩留まりの見極めが難しかったのでしょう。平成26年度入学生はほぼ定員ぴったりに改善されています。